吉本興業をはじめとする芸人による〝闇営業〟騒動は、メディアを含む業界全体――特にテレビ局のコンプライアンスのあり方に大きな疑問を投げかけたと言っても過言ではない。
端を発したのは5年前に行われた振り込め詐欺グループの忘年会だった。お笑いコンビ・カラテカの入江慎也(42)の仲介で雨上がり決死隊の宮迫博之(49)やレイザーラモンHG(住谷正樹=43)、ロンドンブーツ1号2号の田村亮(47)、ガリットチュウの福島善成(41)ら4人の芸人が闇営業で出演していた。
振り込め詐欺グループの忘年会だが、グループには広域指定暴力団の組員も多数加わっており、グループの主賓で「会長」と呼ばれる男性の結婚披露宴も兼ねたものでもあった。
司会は入江が務めたが、その席で宮迫は「くず」の代表曲「全てが僕の力になる!」を熱唱したかと思えば、会長と呼ばれる男の新妻からのリクエストに応え、ステージ上で熱く抱擁した揚げ句、サプライズとして夫婦を自身のレギュラー番組「アメトーーク!」(テレビ朝日)に招待することまで約束したというから、もはや闇営業とは思えない「大胆な行動、発言」という以外なかった。
ところが、その忘年会の様子が、5年も経った今になって写真週刊誌や女性誌などで報じられ、世に知れ渡ることになったわけだが、吉本興業にとってはおそらく「とりあえず」程度に考えていたに違いない。一応、事情を聞いた上で闇営業を仲介した入江を、トカゲの尻尾切りの如くクビにし、その上で忘年会に出席して〝芸〟を披露した面々については、特殊詐欺グループとは「知らずに出席して芸をした」「ノーギャラだった」などと反省したフリだったのかもしれないが、そう証言したことから「だったら仕方ないな」といった程度の「厳重注意処分」で一件落着…、といくはずだった。…というより、させるはずだったのかもしれない。
ところが、その後も闇営業への参加者が続々と発覚。しかもここにきて、これまで「ノーギャラだった」と言い訳していた宮迫や田村らだったが、ついに「ギャラを貰っていた」ことを隠せなくなり、宮迫、田村、レイザーラモンHG、ザ・パンチのパンチ浜崎(38)、くまだまさし(45)、天津の木村卓寛(43)、ムーディ勝山(39)、ストロベビー・ディエゴ(41)は、当面の間、活動停止の謹慎処分に。
その後も、ワタナベエンターテインメントに所属するザブングルの松尾陽介(42)と加藤歩(44)も同じ忘年会に出演していたことから、謹慎処分が下された。
暴力団幹部の誕生会に出席していた芸人も
2700の八十島宏行(35)と常道裕史(36)も謹慎処分を受けていたが、スリムクラブの真栄田賢(43)と内間政成(43)らと指定暴力団稲川会幹部の誕生会に出席していたことが発覚。無期限の謹慎処分となった。
この闇営業の〝仲介役〟として登場してきたのが、ものまねタレントのバンドー太郎(48)なる人物である。
そのバンドーは6月30日、都内で会見を開き、スリムと2700に対して、反社会的勢力の会合に事務所を通さないで仲介したことを謝罪した。会見でバンドーは「事務所を通さない」「ギャラ10万円」といった条件で直接交渉したことも明かしている。
仲介の経緯については、知り合いだった「建築会社社長」から「兄の誕生パーティーがあるから有名な人を呼んで盛り上げたい」と相談され、以前から親しかったスリムと2700を誘ったとした。その際、相手方の職業については「飲食店経営のオーナーと聞かされていた」と言い「報道で反社会的勢力の方だったんだと初めて気付いた」と言う。
だが、常識的に考えたら、そんな言い訳自体が怪しい。気付いていないはずがない。だいたい、スリムと2700が事務所に内緒で「たった10万円」程度のギャラで仕事を引き受けたのは、おそらくバンドーから相手方の〝素性〟も当然のように聞かされ「これから、(この先)いいスポンサーになる」とか何とか言われたと考えるべきである。どっちにしてもやましい気持ちがあったはずだ。
いずれにしても、最初は否定していたものの、今になって「実はノーギャラではなかった」とか、それこそがお笑いだろう。だいたい、そんないい加減な言い訳を、隠し通せると思っていたとしたら考えが甘過ぎる。
芸能界からは「さすがにノーギャラでは、ここまではやらない」なんて声まで出ていたし、あの松本人志でさえ「ノーギャラなんかではやらない」と言っていたほどなのだから、何を今更である。
この問題は、ギャラがどうのこうのという前に、闇営業先が、社会問題化している特殊詐欺グループの忘年会だったことだ。それも、その詐欺グループによる被害総額は40億円にも上るというのだから、写真週刊誌で報じられた時点で厳しく対処すべきだった。それを「全く知らなかった」「初めて知った」なんて言い訳をしてきたこと自体が不可解である。
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